不動産運用の特異性と共通点

最近起こっている家づくりにかかわるトラブルの多くは、法廷で裁いても本質的な解決には至りません。
トラブルを未然に防ぐことこそ、何よりも求められています。 トラブルを未然に防ぐ第一歩は、適正な契約のもとに家づくりをはじめることです。
私たちが提案している契約サポート活動は、行政のような公の機関ではなじまず、また、営利事業として行うには客観性を欠き、第三者機能を果たすことは難しい面があります。 幸い、一九九八年、わが国においてもNPO法が成立し、日本でもNPO法人による活動が認められるようになりました。
終章で私たちのNPO法人について案内してありますが、NGO活動と並び、NPOは、今後の市民生活にとって重要なセーフティネットの役割を果たすものと期待されています。 契約のトラブルとともに多いのは、施工ミスについてのトラブルです。
しかし、第一章でも述べたように、そのほとんどは注意していれば簡単に防げる「うっかりミス」なのです。 現場監督の行っている仕事を客観的にチェックするために施工会社では施工検査を実施することが普通です。
しかし、専門の検査員を置いて定期的に検査を実施しているという会社でも、額面どおりに受け取れないのが実態です。 施工会社によっては検査部門が独立して、実際の現場担当とは違う目で検査を行っている場合もあります。
また、現場担当者の上司、もしくは代表者が検査を行っている会社もありますが、どちらも同じ会社の従業員が検査していることに変わりはありません。 同じ会社である以上、会社の事情が優先されたり、身内同士の甘えが生まれたり、また、現場の優劣がつけられたり(儲けのいい現場を優先する)、同時に数カ所の検査が重なったり、さまざまな事情で検査がおろそかになることは否めません。
施工検査を会社業務の中でどう位置づけるかによって、対応はまるで変わってきます。 社内で検査機関を設置している会社でも、第一線の人材を検査部門に配置しているのはまれです。
なぜなら検査部門は金を稼ぐセクションではなく、ややもすれば仕事を止め、やり直しを発生させるポジションですから、そんなところに能力のある人を配置したらマイナスの仕事が増えてたまりません。 また、検査マニュアルや、検査報告書など一応整備している会社も多いのですが、その通りに厳密に検査を行えばたちまち工事に支障を来しかねず、有名無実になっている例も多く見受けられます。

最近、農水省や外務省で行われている行政内部の不正行為に対する内部調査に対して多くの批判が集まっていますが、悪くいえば泥棒に縄をなえといっているに等しく、自分たちのしている仕事を自分たちで調べ、厳しく律することの難しさは誰しも理解できることと思います。 施工会社自身が「わが社は検査をしているから安心です」といったところで、どこまで信用したらいいのか難しいところです。
それでは、現場で行われている他の「検査」について見ていくことにしましょう。 公の行っている施工中の検査としては、金融公庫の中間検査、特殊建築物などの特定工程の検査、建築基準法で決められている完了検査などがあげられます。
金融公庫の中間検査は、文字通り住宅金融公庫の融資を受ける場合に、建築確認申請や金融公庫の仕様に基づいて施工されているか否かを確認するもので、一般には、特定行政庁が代行して行います。 検査としては、建物が建ちあがって、金物・筋交い・断熱材などの施工が完了した段階で、現場に来て検査をします。
ただし、ここでの検査は、法的に適合しているか否かであって、出来栄えや、施工精度を見るものではありません。 したがって、違反建築の防止はできても、欠陥住宅の防止にはなり難い面があります。
なおかっ、実際に現場の検査時間はわずかで、ひどい時は五分程度で済ますことがあります。 これでは「見た」というだけで検査したことにはなりません。
この検査は金融公庫の融資を受ける場合の絶対条件になりますから、検査に合格しないと融資が実行されません。 よい悪いは別として、義務的に検査を受けているのが現状です。
次に、特定工程の検査です。 これはその地区の行政庁がそれぞれ定めている建築物に対して行っている検査です。
たとえば、木造の三階建て以上のものや、共同住宅、木造とRC造〔鉄筋コンクリート造〕などの混構造建築物の場合であり、通常の木造二階建て、専用住宅などは対象となっていないことが多いようです(行政庁によってはすべての建築物に対して行っています)。 内容としては、基礎の配筋時〔コンクリートの張力を増すために基礎中に鉄筋を入れる〕、上棟時など、二回程度の検査で、検査費用も別にかかります。
ここでは、構造的に問題がないかどうかが検査対象であるため、構造計算通りの施工がされていて、金物などが適切な場所に使われていればよしとします。 ここでも、出来栄えや、施工精度については検査対象外ですが、構造的な問題については欠陥の発生防止になっています。

最後の完了検査は、建築基準法に定められている、工事完了にともない検査済証を取得するため行う検査です。 これは、建築確認申請により許可された建物はすべて受けなければいけないものです。
前記の特定工程の検査対象建物は、特定工程の検査に合格していなければ検査済証は取得できません。 しかし、残念ながら、法で決められている検査にもかかわらず、実際に検査を受け検査済証を取得している建物は、非常に少ないのが現状です。
時には、施主の希望で設計変更をし、結果的に違反建築物になってしまうという理由で検査を受けられない場合も多々あります。 施工会社にとっては、検査済証の取得について施主が了解していれば取らなくてもよいという風潮もありますが、検査を受けないための逃げ口上にすぎません。
理由を問わず検査を受け、検査済証をきちんと取ることをおすすめします。 このように、行政が行っている検査は違反建築の防止が第一であり、なおかっ、すべての施工段階で検査を行うわけではないので、実際には法の網の目をかいくぐるような施工現場が多数存在します。
現実に住宅金融公庫の検査を受けた建物でも、欠陥住宅となってしまった例もあります。 二OOO年四月一日に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の定めにより、住宅の暇庇担保期間〔液抗保証が約束されている期間〕が一O年となり、任意選択としての「住宅性能評価」をできることになりました。

この「住宅性能評価」を行う指定住宅性能評価機関は、財団法人や株式会社等で日本全国に配置されています。 しかし、国が新しくつくった法律でありながら、実際に家づくりを考えている国民が欲しいものとは程遠く、施行されて二年を経過してもほとんど活用されていないのが現状のようです。
これにはさまざまな理由がありますが、ことに大きいのは、この性能評価制度が大手ハウスメーカーに有利であり、一軒一軒を手づくりでつくっている建設会社や地場工務店には対応しきれない制度になっている点です。

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